投稿日:2020年7月29日 更新日:2023年7月13日

雛人形

毎年悩む…雛人形(段飾り)の飾り方(並べ方)と意味を詳しく解説!

雛人形を階段状に飾る「段飾り」。一般的には、日本で縁起が良いとされる奇数の一段・三段・五段・七段のものが多く作られており、それぞれお人形の並べ方にも決まりがあります。特に段数の多い段飾りだと、桃の節句のたびに「どう飾るんだっけ?」と忘れてしまいがちです。この記事では、雛人形の置く場所や段飾りの意味をはじめ、一番段数の多い七段飾りの飾り方をご紹介します。参考になりましたら、ぜひ毎年見返してみてくださいね。

雛人形(段飾り)を飾る場所に決まりはない

雛人形を飾る前に決めておきたいのが「飾る場所」。ただし飾る場所には特に決まったしきたりはありません。せっかく飾るお雛様なので、リビングや居間などの目立つ場所に飾るのがおすすめです。一段飾りなどのコンパクトタイプのものであれば、そのスマートさを活かして本棚の上や机の上に飾ってもよいでしょう。

段飾りは平安時代の貴族の婚礼儀式を表したもの

飾った後、お子さまからの質問にも答えられるように、段飾りの意味も知っておくのがおすすめです。段飾りは、平安時代の貴族の婚礼(結婚)の儀式の様子を表したものです。そのため最上段には新郎新婦にあたる男雛・女雛が飾られ、下段になるにつれて護衛や官女などが続く構成となっています。五人囃子は、婚礼のおめでたい席を盛り上げるための音楽隊として参加しているのです。

男雛・女雛の並び方には地方によって違いがあり、向かって左側が男雛・右側が女雛の場合は関東風、この逆が関西風と言われています。日本では古来から「左の方が位が高い」という習わしがあり、お人形目線だと男雛が左側になる関西風は、このしきたりにならっています。一方、その逆となる関東風は「男女が並ぶ時は男性が右側」という西洋の風習にならっているものです。

関東風は近代的、関西風は古典的という違いがあるだけでいずれも正しい並べ方なので、家族・親戚の並べ方や地域の並べ方に習って、しっくりくる方を選ぶとよいでしょう。

 

段ごとに意味も解説!七段飾りの飾り方

それでは、段飾りの中でも一番大きな七段飾りについて、実際の飾り方をご紹介します。

・最上段(一段目)

段飾りの最上段には、男雛(お殿さま)と、女雛(お姫さま)を配置します。

男雛は頭に冠をかぶせて手に笏(しゃく)を持たせ、左脇に刀を差します。冠の後ろにある纓(えい)はまっすぐに立つように整えましょう。女雛は檜扇(ひおうぎ)をきれいに広げ、両手に持たせます。お人形の腕の部分は多少なら動かせるので、檜扇を持たせにくい時はひじの近くから腕を動かしてみましょう。

男雛と女雛は畳や紋織物の一種である緞子(どんす)を張り、さらに繧繝(うんげん)の縁を貼った台の上に飾ります。後ろには金の屏風を、両脇にはぼんぼりを置き、ふたりの間にはお神酒を乗せた三方(さんぼう)を飾りましょう。

・二段目

二段目には三人官女を配置します。

3人のうち、1人だけ座っている(まれに1人だけ立っている)官女を中央に置きます。残りの2人のうち、左手の指が伸びている官女を向かって左側、曲がっている官女を向かって右側に置きます。

それぞれ、以下のような道具を持っているケースが一般的ですが、地域やデザインにより、異なる道具を持っていることもあります。

向かって左端 提子(ひさげ / 注ぎ口が付いた小鍋のような形をした金属製の容器。加銚子(くわえのちょうし)とも呼ばれる)
中央 三方(さんぽう / 盃を乗せる台)
向かって右端 長柄銚子(提子によって移されたお酒を盃に注ぐための道具)

また、中央に置かれる官女の眉がなく歯が黒いことがありますが、これは当時の既婚者の習慣であり、他の2人より立場が上であることも同時に示しています。

・三段目

三段目には五人囃子を配置します。

向かって左から「太鼓(たいこ)→大鼓(おおかわ)→小鼓(こつづみ)→笛(ふえ)→謡(うたい)」の順で並べます。「音が出る場所が口から遠い順に左から配置する」と覚えておくと並べやすいでしょう。
また、楽器はこれだけではなく、雅楽になぞらえた羯鼓(かっこ)・琵琶(びわ)・笙(しょう)などを持っている場合もあります。

・四段目

四段目には随身(随身…右大臣・左大臣のこと)を配置します。

右大臣・左大臣という呼び名は「男雛・女雛から見たときの名前」であるため、向かって右手に左大臣を、左手に右大臣を飾ります。格上(年上)である左大臣が黒い衣装を、右大臣が赤い衣装を着ています。

それぞれ矢を入れた胡簶(やなぐい)を背負わせ、左手に弓を、右手に矢を持たせます。

・五段目

五段目には、仕丁(しちょう・じちょう)の三人を配置します。

仕丁とは御所の雑用係のことです。それぞれ泣き・笑い・怒りの表情をしていることが多く、「三人上戸(さんにんじょうご)」とも呼ばれています。誰をどこに置くかは特に決まっていませんが、持たせる道具は向かって左から台笠(だいがさ)、沓台(くつだい)、立傘(たてがさ)の順となっています。関西風の場合、中央のお人形がちりとり、その両脇がほうきと熊手を持つこともあります。

仕丁の両脇には「桜橘(さくらたちばな)」を飾ります。それぞれ「左近の桜(さこんのさくら)・右近の橘(うこんのたちばな)」と呼ばれていますが、これも左大臣・右大臣同様「男雛・女雛から見たときの名前」であるため、飾るときは向かって左に橘、右に桜を置きます。

・六段目

六段目には雛道具を配置します。

雛道具とは、上級武家の婚礼道具(嫁入り道具)を表現したものです。一般的には、箪笥(たんす)・長持(ながもち)・挟箱(はさみばこ)・鏡台(きょうだい)・針箱(はりばこ)などの室内用品が並びます。

この段は、並べ方に特に決まりはありません。お子さんに好きな順に並べさせてあげても楽しいかもしれませんね。

・七段目

七段目にはお駕籠(かご)や御所車(ごしょぐるま)・重箱などを配置します。

これらは婚礼道具ではありませんが、嫁入りの際に長距離を移動するために使われた道具です。嫁入り以外にも、お花見や狩りなどさまざまな用途に使われていたようです。

こちらも並べ方に決まりはありませんが、向かって左にお駕籠、右に御所車が置かれることが多くなっています。

 

飾り方の決まりには意味がある!大きいお子さんとはぜひ一緒に飾りつけを

段飾りは飾る場所に決まりはないので、目立つ場所に飾るのがおすすめです。平安時代の貴族の婚礼儀式を表している段飾りは、地域によって並べ方に違いがありますが、どちらも正しいのでしっくりくる方を選ぶとよいでしょう。段飾りのなかでも特に大きな七段飾りについては、それぞれの段に並べ方や決まりがあるので、ぜひこの記事を参考に飾り付けてみてくださいね。お子さんが小さいときは手早く飾り、大きくなったら飾りの意味を教えながら一緒に飾ると、より思い出深い雛祭りになるのではないでしょうか。


この記事の監修者
代表取締役 原 英洋

1963年東京生まれ。祖父:原米洲(人間国宝)、母:原孝洲(女流人形師)。慶応義塾大学経済学部卒業後、大手出版社・集英社に入社。1987年父親の急逝により、家業である人形専門店に入社。1988年専務取締役就任。2008年に独立して株式会社ふらここを創業。女性活躍推進活動に注力し、2015年に経済産業省『ダイバーシティ経営企業100選』の認定を受ける。
スタッフ全員に光をあてたチーム体制を大切にし、人形業界全体の再興を見据え、「お客様に望まれる商品が多く作られるようになれば、業界も元気が出てくる。その先駆けになるものづくりを進める」ことをモットーとし、日本の美しい文化を次世代に伝えていくことをミッションとする。

代表取締役 原 英洋