干支の風習

日本人は古くから動物に宿る神秘的な力を信じてきました。この信仰と十二支とが結びつき、江戸時代の中頃に、その年の干支にちなんだ動物の置物を玄関や居間に飾って年神様(としがみさま)をお迎えする風習が生まれました。

現代でも、その年の干支は、七福神や招き猫などと同じように、福を招く開運のお守りとして、多くの人たちに親しまれています。

干支(えと)について

干支(えと)とは、正確には、十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)の組み合わせを言い、中国古代の暦(こよみ)にその起源を見ることができます。

十干十二支の組み合わせは、星の運行がひと廻りする六十年に当てはめ、六十年を1周期とします。

私たちが一般的に「ね、うし、とら、う、たつ、み、うま、…」と言っているのは十二支のことで、もともとは時間(年、月、日、時)を区分するために使われていた名前でした。そして、暦を理解しやすくするために、これに動物を当てはめたのです。

日本人と子(ね:鼠)

鼠(ねずみ)は、幸福をもたらす動物として、古くから日本人に大切にされてきました。『古事記』では、野火に囲まれて困っている大国主命を助ける動物として描かれ、また、仏教では大黒天の使者として祭られています。

また、鼠(ねずみ)は子だくさんであることから、子孫繁栄のお守りとしても多くの人たちに親しまれています。

日本人と丑(うし:牛)

牛は、人類と最も付き合いが古い動物であり、農耕や運搬の重要な担い手として、大切な役割を果たしてきました。

また、牛は天神様のお使いとして、太宰府天満宮をはじめ多くの天満宮の境内には、牛の像が祭られています。その他、京都・八坂神社のご祭神である牛頭天王や大阪・四天王寺の石神堂(牛王尊)など、牛は日本人にとってとても大切な動物として古くから親しまれてきました。

日本人と寅(とら:虎)

大切にして手元から離さないものを「虎の子」といいますが、虎は自分の子供をとても可愛がって大切に育てます。虎のそんな習性にあやかって、日本人は古くから、健やかに成長して欲しいという願いを込めて子供たちに虎の玩具を与えてきました。

また邪鬼は虎を恐れるという言い伝えから、神社やお寺などでは、張り子の虎をお守りとして授けるところも多いようです。

虎は日本には生息しませんが、古くからとても身近な存在として、日本人に親しまれてきた動物です。

日本人と卯(う:兎)

「月にはうさぎが棲む」という伝承や、わらべうた、昔話でもうさぎがよく登場するように、古くからうさぎは身近で親しみを持って語られてきました。

一方で、山の神として祀られることも多く、滋賀県では「山の神の祭日には神様がうさぎに乗って山を巡る」「神様はうさぎの姿をしている」と言われています。

また、うさぎの穏やかな様子から家内安全、跳躍する姿から飛躍を象徴するものとして古くから親しまれてきました。

日本人と辰(たつ:龍)

十二支の動物で唯一、伝説上の生物である霊獣の龍。古くから日本でも、水や海の神として祀られ、「龍が現れると何かおめでたいことが起きる」と考えられていました。冬は水中にひそみ、夏は天に上っていくとされ、竜巻や雷、虹などの自然現象を起こすとして大自然の躍動や鳴動を象徴するものでした。

また、有名な故事「登竜門(とうりゅうもん)」では、鯉が滝を上ると龍になるという伝承があり、立身出世の縁起物として現代でも親しまれています。

日本人と巳(み:蛇)

生命力の強い蛇(へび)は「命」そのもののシンボルとして、また稲作の守り神として古くから信仰されてきました。白い蛇は特に縁起が良いとされ、高天ヶ原神社や岩国の白蛇神社では「無病息災」「家内繁栄」の神様として祀られています。

現代でも、各地で蛇を崇める風習が残っており、「蛇の抜け殻を財布に入れるとお金が貯まる」など財運にも恵まれるという言い伝えがあります。

日本人と午(うま:馬)

馬は「物事が“うま”くいく」「幸運が駆け込んでくる」などといわれる縁起のよい動物です。古くから人との付き合いが深く、人の役に立ち、人も馬を大事に扱ってきました。そのため古来より、馬にまつわることわざも非常に多く作られてきました。

そのパワフルな印象から生命力を表すシンボルとして、また馬は家に飾ると名声を呼ぶといわれる日本人にとてもなじみ深い動物です。

日本人と未(ひつじ:羊)

羊は、古くは『日本書紀』にも描かれ、約1万年前から家畜として飼われてきた古くから人と関わりの深い動物です。常に集団で行動し群れを大切にすることから、家族の安泰を示し、いつまでも平和に暮らすことを意味します。

また「羊」という漢字は、「祥」や「美」「善」に繋がるとされ、それぞれ「吉祥」、「美しさ」「善良」という意味に通じる縁起のよい字とされています。

日本人と申(さる:猿)

猿は、日本人にとってはとてもなじみの深い動物で、日光東照宮の三猿(見ざる、聞かざる、言わざる)はとても有名です。この三猿は、庚申様(こうしんさま:病魔や悪魔を祓う神様)のお使いとして、全国のいろいろな神社やお寺で見ることができます。

また、お正月に行なわれる“猿まわし”は、「猿が来ると災厄が去る(さる)」ということで、鎌倉時代から続いている日本の伝統芸能です。

日本人と酉(とり:鶏)

鶏は、金運にかかわる動物として、日本人に古くから親しまれてきました。

特に、江戸時代の中頃から始まり、毎年11月の酉の日に、全国の大鳥神社で行なわれる「酉の市」はとても有名です。酉は、「取る」に通じることから、毎年の「酉の市」には、「福をとり(酉)寄せる」という縁起をかついで、多くの参詣者が訪れます。

日本人と戌(いぬ:犬)

犬は、飼い主に忠実な動物として、多くの昔話や民話、お伽噺(おとぎばなし)などに登場し、大活躍します。特に、「桃太郎」や「花咲爺(はなさかじじい)」などの昔話では、幸福を招く使者として登場し、縁起のよい動物としてとても人気があります。また、神社の狛犬(こまいぬ)が示すように、犬には魔を祓う(はらう)力があると信じられ、古くから日本人に大切にされてきました。

そして、犬はお産が軽いことから、安産のお守りとしても多くの女性たちに親しまれています。

日本人と亥(い:猪)

猪(いのしし)は、猪突猛進(ちょとつもうしん)の言葉のとおり、猛烈な勢いで突き進むことから、いかなる災いも打ち破る象徴として、古くから日本人に大切にされてきました。護王神社や愛宕神社では、猪(いのしし)は神様の使者として祭られており、また、仏教でも、猪(いのしし)の背に乗った摩利支天(まりしてん)の像はとても有名です。

また、猪(いのしし)は多産であることから、五穀豊穣のお守りとしても多くの人たちに親しまれています。